メーカー不祥事に思う

今の旬は、どっかのガス器具メーカーですか。
世間的には「またか」って感じなんでしょうね。
こういうニュースがある度にいつも思うことがあります。
 そうなること、実はわかってたでしょ?
と。
車にしろストーブにしろエレベーターにしろ、
で、今回の湯沸かし器にしろ、
そういうことが絶対起こらないぞ、とは思ってないと思うのよね。
これは、技術者は技術者で思うことだし、
経営者もしっかりそういうことを知っている。
多分ね、どの会社も、
製品に、最高の品質と最高の安全性なんか求めていないのです。
ちゃんと採算がとれる製品でないと商品にならない。
現実はここが基本。
なので、お客さんをある程度満足させつつ、
品質を妥協して利益を上げるギリギリの線を狙ってくる。
この精神は、ソフトもハードもかわらないと思う。
私は今ソフト業界にいるのでこういう喩えしかできないんだけど、
たとえば、あるソフトを開発して立会い検査に出したときに、
その速度が遅くて使い物にならない、とお客さんにいわれると。
遅い理由はいろいろあるんですが、
例えば、メモリをオーバーランしないようにチェックを入れているとか、
通信の品質を保つためにチェックサムを厳しくしているとか、
最初は、そのあたりの最低線は削らないように、
他の部分で何とかパフォーマンスを上げようとするわけです。
が、徐々に妥協が入ってきて、ま、いいんじゃないの、って感じで、
遂にそのあたりの仕様も削って速度アップを優先させることもある、と。
イコールお客さんの満足につながると安直に考えてしまう。
今回の湯沸かし器の話なんか、まさにそう。
温度が上がると安全装置がすぐ働いて火が消えてしまうから、
その安全装置をはずしてしまって温度が上がるように改造してしまう。
その工法なら簡単だし早いし安上がりなんでしょうね。
結局、お客さんのその場の欲求を満たすために、
今後のこと、将来のことに目を瞑る行為が横行してるんですよね。
短期の無理な開発スケジュールをひいてしまうのも、
早く完成させてお客さんを満足させる、という安直な精神。
それは、それだけ品質が落ちるということ。
短期な上に品質の良いものを求めるのは最初から無理です。
技術者は、それをやっちゃいけないことを知っている。
知りつつも、そうしないと納期に間に合わない。
お客さんの提示する値段に見合わない、待ってくれない。
だから、何か問題があるかもしれないな、
と思いつつも、世の中に流通させてしまっているものって、
かなりあると思うんですよね。
人命に関わるものはこうして大きなニュースになるけど、
そうでないものも含めれば、それこそ数え切れない。
問題あるかもしれない、けれど、大抵は大丈夫かな、
と思っているモノは、ほぼ100%その問題が発覚します。
もうこれ断言できます。
これ、実際はお互い様なんですよね。
知りながら見逃しているメーカーも勿論悪いですが、
品質より安さ速さを求める客がそうさせていることでもある。
どこらへんが丁度良い線なのかというのは、
かなりグレーで難しい話で。
ただね。
今回のガス器具屋の話に限っていえば、
まず一発目に「うちの責任じゃありません」と言い切った、
あの態度は酷いと思う。
メーカーは、仮に本当は自分が悪くないとしても、
まず、自らの否を疑うべきですよね。

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