飛び出し猫

猫が飛び出してきたら、迷わず轢き殺せ。
昔、従兄弟にそう教わった。あ、その従兄弟も猫が憎いわけでなく、猫を避けて事故って自分が死ぬのは馬鹿らしい、ということ。
今のところへ引っ越すとき、ある程度の荷物は自分で運んで持ってきていた。そのとき、暗がりから狸が飛び出してきて轢きかけたことがある。急ブレーキで間一髪だったが、そのおかげで、後ろに積んでいた荷物が、ドンガラガラガッシャーン!
多分、世の中というのは、どこかで平均化するようになっている、そういう調整機構があるのだろうなと思う。狸が助かれば、その分私が被害を受ける。私が何か幸運に見舞われたら、どこかで不運な目に遭っている人がいるのかもしれない。
「無限ノ偶然ハナイノダ。ドッカデ埋メ合ワセガツクモンサ」
ゴンスケサンもそういっているのだからそうなのだ。
仏教の因果応報では、これは世界でトントンでなく、自分自身においてトントンということになるのだが、結局自分自身がどこまでだか、さらには誰なのだか、はっきりしないのだから、同じことである。
色即是空…

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