はやぶさ

探査機「はやぶさ」が地球に戻ってきますね。
ここにきてえらい話題になってるので、
この機に宇宙開発の啓蒙記事でも書いてみようかと。
とりあえず、こんな方面の事業を仕分けで削るな!と。
もちろん、無駄の多そうな科学研究というのも
結構あったりするんでしょうけど(産○研とか?)
生活に直接関係ないからという理由で切るのだけは
勘弁してくださいってことですね。
で、件の「はやぶさ」。
これは2003年の5月に宇宙科学研究所(ISAS)から
打ち上げられた工学実験機とされています。
実際は小惑星探査機なんですが。
そう、NASDAとISASとNALが統合されてJAXAになったのが
2003年10月なので、その前に上がった探査機なんですね。
ロケットもM-Vで、NASDAのH-II系とは別系統。
このへん、当時の科学技術庁と文部省の縦割りのせいで
開発が別々に行われてた不合理もあったんですが、
そのへんJAXAになって改善されたんですかね。
M-Vロケット自体は廃止されてますが、
技術の一部はH-IIA、H-IIB系に引き継がれてるとのこと。
とにかく、2003年に打ち上げられた当初の予定では
はやぶさは2007年6月に地球に戻ってくるはずでした。
それが、様々なトラブルに見舞われて
一度は地球への帰還も絶望視されてたんだけど、
奇跡の復活を遂げたわけですね。
はやぶさの主なミッションは、

  1. 電気推進の実証実験
  2. 自律型探査の実証実験
  3. 小惑星からのサンプルリターン
  4. 地球帰還

とされてます。
1は、従来の惑星探査機は、化学燃料を使った
ロケットエンジンで推進するのが一般的だったんだけど、
その場合、燃料が重いのと、燃費が悪いのが最大の課題。
どちらも直接コストに響いてくる話で
重量に関しては1kgにつき1億円増えるともいわれてます。
それを解決するのが電気推進というやつですね。
イオンエンジンといわれてますが、
これはキセノンガスを電離させてプラズマ状態にした後
高電圧をかけて噴射し推進力にするという技術。
当然、その加速力はロケットエンジンに劣るけど
燃費も良く、燃料も化学燃料に比べてはるかに軽いので
長期間の宇宙航行には非常に向くといえそうです。
2の自律探査というのは、
探査機を地球から遠隔操作して探査するのではなく、
その名の通り、探査機が自分で判断して現地探査をする
ってことですね。
はやぶさの調査対象である小惑星「イトカワ」は
地球から平均3憶km離れた位置を周回しているので、
その通信に片道約10~20分はかかる。
そんな状態でのリアルタイム操作は難しいので、
いっそ探査機に任せてみてはどうか、という話ですね。
はやぶさには、惑星探査用のカメラやセンサ以外に
航行用カメラ、レーザ高度計、近距離センサ、衝突防止用センサなど
自律航行するための機器もたくさん搭載されていて、
これらを駆使して、小惑星に接近、着陸、サンプル採取、離脱
という一連の作業ができるようになっている。
流れとしては、
まずレーザ高度計を使って上空100m程度まで接近した後、
サンプル採取地点にターゲットマーカといわれるボールを撃ち込み、
そのマーカの位置を航行用カメラで捉えながら、
近距離センサで地表の様子を探りつつさらに接近して、
衝突防止センサで慎重に距離をみながら着陸、
地表に金属球を撃ち込んで粉砕し破片を採取(ここ約1秒間)、
採取したらエンジンを起動して上空10kmまで上昇。
以上を2、3回繰り返す。
実際、1回目の接近では予定と異なる動きをしていた
(上昇中のはずが下降していた)ということで、
急遽上空100kmまで戻す命令を出して失敗。
(実はこのとき、はやぶさは着陸に成功していたらしい。)
2回目、今度は予定通りターゲットマーカに接近し、
金属球射出、サンプル採取まで上手くいった
という信号が送られてきたのだけど、もしかすると
これが上手くいってない可能性もある、とのこと。
でも、これを全部自動でやるってだけで、スゴイですよ。
成功してるに越したことはないけど、
たとえ失敗してても、これだけのシーケンスを自律制御
するようなプログラムってだけでもスゴイと思うなぁ。
ちなみに、この直後にエンジントラブルに見舞われて、
予定していた地球帰還ができなくなったんですね。
そして3のサンプルリターンというのは、
地球外の天体の岩石などのサンプルを採ってくる、てこと。
この打ち上げ時点で、サンプルリターンをやってたのは
アメリカのアポロ計画で月のサンプルを持ち帰ったのと、
旧ソ連のルナ16号が、同じく月のサンプルを回収したくらいで、
はやぶさは、それ以来のサンプルリターンになるんですね。
しかも、月どころか、地球重力圏外の小惑星から!
ただ、その採取が上手くいってるかどうかは
上の2が上手く行ってれば、ってことになるわけですが。
で、最後の4、地球帰還の成功はほぼ確実でしょう。
これらの大きな4ミッション以外にも
はやぶさはいろんな最先端技術の成果をあげてます。
地球重力を使ったスウィングバイ航法。
小惑星イトカワの写真撮影を含めた科学探査。
そのイトカワへの着陸。
何より、2007年に帰還予定だったものが
エンジントラブルなどで計画続行が一旦絶望されながらも、
再帰を果たして地球へ帰ってきた!ということだけで
十分誉められて良い成果なんじゃないかと思いますね。
だって、3年間も、ずっとひとりぼっちで、暗い宇宙空間で
ずっとセーフモードで耐えてたわけですよ?
けなげじゃないですか!(そういう話じゃないって)
そんなはやぶさも、今夜11時頃に地球へ到着します。
何度もトラブルに遭いながら満身創痍の帰還です。
ホントお疲れ様でした、ですよね。
今後、はやぶさ2の計画もあるみたいだけど、
今回の経験はかなりその糧にもなるはず。
今は経済状況がこんなで、科学研究方面の予算が
えらく蔑ろにされがちなのが一番の不安ではありますが
何とか今後も頑張ってもらいたいものです。
今の時代、国のやってることで夢を見られることなんてのは
もうこのへんくらいだもんなぁ。

コメント

  1. おも より:

    還ってきましたね、はやぶさ。
    ラストの追加ミッションでの地球画像と
    再突入の美しい輝きに泣きました;;
    帆布も広げずに太陽光圧を利用とか
    生ガス噴射で姿勢制御とか
    無茶と無理のオンパレードだった旅だったけど、
    最終軌道調整あたりからのカンペキな動作に
    やっぱり「魂」宿ってるのかもと思わされ^^;
    今日は一日、空を見ては「おかえり」と言ってました。

  2. 月影 より:

    地球か、何もかも懐かしい…ってやつですね。
    ラストミッションは、まさにあの絵にかぶる。[E:bearing]
    いろいろ無茶ができたこと自体、技術力の高さの証明でもあるし、その発想の勝利でもありますよね。
    とにかく、帰ってこれて良かったです。[E:happy01]

  3. RORO より:

    はやぶさが最後にとった地球の姿。
    本当に素晴らしいです。
    芸術的だったなぁ

  4. 月影 より:

    途中で通信が途絶して最後まで画像を送信しきれてないあたりは、泣けますね。数億キロ彼方のイトカワを撮影した同じカメラで捉えた地球というのも別の感動があったりします。

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