トヨタの話が

五輪と並んで大きく報じられてますが。
「電子系、設計に問題ないと確信」 トヨタ社長、公聴会で明言
(sankeibiz.jp)
トヨタの社長が米議会の公聴会に出て
大方の予想通り集中砲火を浴びてゲンナリだったようで。
私はトヨタはあまり好きではないんですが
これに関しては、トヨタにちょっと同情しますね。
この件、経営方法とか政治的な話はさておいて
技術的なところの話として、どうも腑に落ちない点が多い。
まず、先日被害者として証言した人の話
「愛車のレクサスがブレーキが利かぬまま勝手に加速し、
ギアをバックやニュートラルに切替えたり、サイドブレーキを引いても
スピードは落ちない。死を覚悟した直後、車が急に減速を始めた」
これ、話題になってるのでだいぶ有名だと思うんですが
こんな話、もし私が担当者でも「は?」っていっちゃいそう。
しかし、米議会の議員たちは、これ見よがしに
当該証言が事実であるという前提でメーカー責任を追求してる。
話半分に聞いても、冷静に考えてあり得ない。
多分、最近の電子制御トランスミッションは
走行中にバックには入らないようになってると思うんですが
サイドブレーキを引いても減速しないって、どうなんですか。
さすがにサイドブレーキは電子制御じゃないでしょ?
という以前に、車が勝手に急加速し、そして急減速したって
どんなポルターガイスト現象ですか。
今回、リコール対象になってるトヨタ車の場合、
そのアクセルペダルが樹脂製で、その可塑性によって
踏み込んだら戻らなくなり減速しづらくなる恐れがある
というのが、不具合のひとつとして報告されています。
それはそれで、原因が明確で、再現性もあるということで
修理のしようもあるということなんですね。
ただ、車の急加速に関しては、その原因の8割は
アクセルとブレーキの踏み間違いだといわれています。
つまり、運転ミス。
しかし、メーカーはその証明のしようがない。
お客さんに「車が急加速した」といってクレームつけられても
ある意味どうしようもなく、それでも相手はお客さんだから
「どうも申し訳ありません」というしかないんですよね。
この点はソフトもハードも同じだと思うけど、
不具合(バグ)は、その再現性がないと修正のしようがない。
だから、再現手順を明らかにするところから原因究明が始まる。
報道されてるのを聞く限り、
議員たちは、アクセルの電子制御に問題があるんじゃないか
と指摘して、トヨタにその調査を求めていながら、
問題がないというと、トヨタの調査では信用ならんという。
じゃあ、自分たちで調査しましょうよ。
技術的なことがわからないなら
せめて、こうすれば勝手に急加速するんだ、という手順くらいは
その被害者なる人たちや証人たちから聴取したらどうか。
てか、そのくらいやってるか。
話を聞いてもやっぱり再現方法不明ということなんでしょう。
聞くところでは、アクセルの電子制御というのは
トヨタ車に限らず10年以上も前から導入されている技術で
その検査基準も厳しく、仮に電子制御がきかなくなったら
バネ力で物理的にアクセルが閉じるようになってるのだとか。
それでも不具合が起こる可能性はゼロではないでしょうけど、
不具合がない、起こらないということの証明は難しく、
これだけの検査をパスしているのだから「およそ大丈夫」
ということしかできない。
メーカーとしては、それを「問題ない」というわけですね。
ひょっとしたら問題あるかも、なんていったら、そんなものは
商品として売れませんから。
なので、100%安全という保証があるわけじゃないけど、
それでも、おそらく使い方を誤ったであろうお客さんの
クレームというのは、非常に処理しづらいわけです。
原因がわからない、わからないから、改善方法もわからない。
どこか壊れているわけでもないから修理のしようもない。
こういうことへのメーカー側の対応としては、
車に操作ログのようなものをとれる仕組みを入れるところからかな。
ソフトウェアの場合は常套手段ですが、車も電子制御が主流なら
直近1ヶ月程度のログを保存できるのが良い。
そして、理不尽なクレームがきたら、
まず、そのお客さんの車を預かり、記録されているログを確認。
これで、誤動作か誤操作なのかの切り分けはできるでしょう。
証明のしようがないものを、いくら懇々と講釈してみても
お互い疲れるだけですから。
ただ、アメリカの場合、NHTSA(米運輸省道路交通安全局)が
客とメーカーの間に入ることが多いらしく、メーカーとしても
実車で調査できないという仕組みの問題もあるようですけどね。
そこらへんは政治的な問題なので、
それこそ議員たちが改善に向けて頑張らにゃならんところでしょう。
まぁ、実際、ソフトもハードも、それが人間がつくるものである以上
不具合を100%取り去ることなんてできません。
後は運用とサポートにかかってるのであって、トヨタとしては
どっかの中国みたいに「自分は悪くない」と横柄にならず、
仮に全く否がないとしても、謙虚に対応していくのが正解かもですね。

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