昨日、2013年の参議院選挙が終わった。結果、自民党が大幅躍進。昨年の衆院選での政権交代以来続いてたねじれ国会というものがここで解消することになった。
さて、これで何が変わるのか。といったところで、実質、何も変わらなかったりする。衆議院優先という仕組み上、参院で野党が反対したところで、結局衆議院で再可決できるわけで。ただ、その手間が減る分、政策の実行スピードは上がるだろう。そこが大きいといえば大きいか。
今回の選挙の争点はいくつかあったが、私なりに考えたところを以下に書いておこうと思う。
まず、TPP。端的にいえば、輸出、輸入にかかっていた関税がオール0になる協定。あと、法律の適用対象や知財の扱いも外国ルールに従う場合があるという話もあるんだけど、これは騒がれてるほど大きな問題じゃないらしい。やっぱり問題は農業で、今はめちゃくちゃ高い関税に守られて国内産の農産物はちょい高いかな程度なのだけど、これが、関税0だと、数倍の値段の差がついてくるということなので
農家にとっては死活問題になる。
で、自民の方向としては、TPP参加、推進の方向。日本の農家も頑張れば何とかなるとか無責任なこといってるけど、その頑張り方を示せてないので、当事者たちは戦々恐々。私の予想では、日本の農家は今の半分かそれ以下になるだろう。小規模や個人経営は多分もう成立しない。組合や企業が農家を社員として雇って束ねるような形で大規模化してやっと何とかなる程度ではないか。大規模化すると手作業も減るだろうから、品質はある程度妥協するしかなくなってくるのかもしれない。
そんなリスクを負ってまでなぜTPPに参加するのかといえば、輸出メインの製造業には、もうチートレベルで有利な協定だから。そして日本は製造業についていえば輸出国家だ。むしろ参加しない方が不自然って話になる。単純にプラスマイナスで考えて、プラス幅がデカイ方を見たわけね。
実際、米国の製造業方面からは日本のTPP参加に反対されてる。関税ありの現状でも日本車が優勢だったりするわけだから、それがなくなった日にゃフォードもGMも真っ青ですよと。こういうところで弱者切捨てとか格差拡大とか批判が出るんだけど、日本だけでなくどの国も利害の駆け引きをしてるわけね。
次、消費税。自民はこれを上げるといってる。消費税は今5%だが、これを2014年4月に8%、15年10月に10%まで引き上げていく方針。まぁ、増税を喜ぶ人はいない。それでも自民が選挙で勝ったのは、他党もどうせ一緒だろ?的な諦めがあったのだろうなとは思う。
これは財務省の理屈ではあるが、国の借金は今や900兆円を超えてきてる。これは今もどんどん増えている。それはそうで、生産人口が減り税収も減る一方で養わなきゃならん非生産人口の比率は大きくなる一方ということで、医療、福祉といった方面にかかる金額は今後も減る見込みはない。このまま何も対策しないと、ゆるやかに破産に向かうしかない。年金の受取り年齢引き上げや、後期高齢者切り捨てといったあたりも出費を減らす苦肉の策だけど、それでも間に合ってない。埋蔵金なんてものはなかったとなれば、あとは増税しかない。どの税金を上げるでも良いけど、まぁ一番インパクトの小さいのが間接税である消費税だろう、というお話。
わからんでもないけど、消費税を増税したら確実に消費は減るのよね。要は、みんなモノを買わなくなる。ということは、モノを売ってる側は商売あがったりになる。少しでも売れるようにと物価を下げる。そうすると当然実入りも減るので、給料も上げられない。むしろ下がるかもしれなうい。それどころか、人件費が払えなくてリストラとか始めるかも知れない。そうして貧乏人が増えるので、またモノが売れなくなる。するとまた物価を下げるしかなくなる。この負の連鎖。いわゆるデフレ・スパイラルってやつね。こうなると、所得税や法人税の方が目減りしていきますよと。
財務省の理屈もわかるけど、消費税増税したら他の税収も減るから、そこをちゃんとバランスしていかないと、今後の財政は立ち行かなくなるというのは留意したいところ。
次、原発。原子力発電所ね。今、国内の原発は、昨年再稼働した大飯を除いてほぼ停止状態。自民はさらに、安全の確認が取れたところから再稼働していく方針。これも次世代エネルギーが実用化の目処をつけるまでらしいけど、その次世代エネルギーとやらの開発の進捗もあまり芳しくない感じ。今のところ民間ベースだしね。採算に乗らないとどうしても進まない。今、原発止まってるのに電気は止まってないのだから足りてるじゃん?という人がわりといるんだけど、そういう人たちは今の電気がどうやってつくられてるか知っててそういってるのかどうか。
まず、最近、やけに電気代が値上がったのはなぜか?それは電気をつくるための燃料費が値上がったから。その燃料というのは、石油であり天然ガスといった化石燃料だ。あと、一部水力でも賄ってるようだけど、都市部の電力はほぼ火力で賄われてる状態といって良い。
その火力発電所の施設も、休眠状態にあった古いものを原発停止に対応するために再稼働させているという状況もある。ちなみに、火力発電所のメンテは大変で、事故が起こらなければほぼメンテフリーの原発に比較すると、かなりじゃじゃ馬でトラブル回数は計り知れないらしい。まぁ原発は1回でも事故ると重大インシデントなわけだが。扱うリスクが大きいだけにメリットも大きいってこと。原発を再稼働する主な理由としては、その発電の燃料効率良いので、電気料金も引き下げられ、経済に対する負担が小さいということか。
あと、私はもうひとつの理由の方が重要だと思っていて、化石燃料にほぼ100%依存するのは、燃料の輸入国である日本としては、安全保障、危機管理的に見ても危ういだろうということ。つまり、石油、ガス、これらが止まったらどうするかって話。最近はIGCCという石炭を使った発電もあるけど、要は、火力や原子力程度の実用レベルの電源を分散させるべきってこと。その気になれば産油国を引き込んで日本をいつでも機能停止させられるという脆弱性が露呈し続けることになると、これは美味しくない。
当然、原発は特有の危険性がある。炉が壊れたら放射線が出る。使用済み燃料をどう処理するかという問題も解決されていない。率直にいって、今を切り抜けられればOKという打算的な面は大きい。それを百も承知で原発を当面使おうという政策である。実際、今の日本にはエネルギーに関して選択肢が少ない。いつだったかメタンハイドレートが実用化できるかも?という話があったけど、あれも実用化に乗るのは、早くて2018年頃とのこと。コストも割高みたいなので、実用化するとしても、しばらくは他のエネルギーと併用になるだろう。
次、憲法。自民は第9条を変えようといっている。その前に、96条を変えておこうとも。9条は戦争を放棄、戦力を持たないという、わいゆる平和条項。96条は、憲法自体を変える手続きについて定めた条項。国会の3分の2以上の賛成で国民投票に出せて、国民投票で過半数の賛成が得られたところで憲法改正が可能になるという決まりを定めてるのが96条ね。これを国会で過半数の賛成が得られれば国民投票出せるようにしようっていってるのが自民党案。
私は、規則を変えるための規則を変えちゃうのはどうかと思ったんだけど、まぁそうでもしないと、これだけ与党に勢いがあっても議席数の3分の2までは至ることができなかったんだから、今のままだとこの憲法はほぼ永遠に変えられんのでしょうね。
で、9条を変える意味というのは、護憲派に言わせれば、日本が戦争を始めるためとかいう話になってるけど、今の日本が他の国にケンカを売るメリットはほぼゼロである。というか、今さら日本が戦争に積極的になるとか本気で思ってるのか。単に、与党に対する野党の存在感を出すための対立軸づくりというか、やっかみ半分というか、でなければどこかの中共の回し者なんじゃないかと。
今の第9条では、ぶっちゃけ自衛隊も憲法違反です。その条文に「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」とあるんだけど、自衛隊はどうみても戦力ですし。国外に出て活動しないことで自衛であるという主張も苦しいもので、そのためにたとえ平和的活動でも自衛隊による国際協力が制限される。それより何より、日本周辺における国防活動すらままならない。明らかに国境を侵してきた船舶や航空機も、拡声器や無線で「出てってください」と促すことしかできないっていう。できて威嚇射撃までだもんね。実際に撃沈や撃墜はできない。
とりあえず、普通に動けるようにしましょうよってこと。いや、だからって侵入してきた船を即撃沈しろって話じゃなく、それが可能なんだと相手に認識させられるということが大きいってこと。今は、自衛隊が攻撃してこないことを相手も知ってるからね。とはいえ、海外に自衛隊を制限なく派遣できるようになれば多国籍軍としての活動にも発展するだろうから、そこで軍事活動に関わる可能性もゼロではないわけだけど。少なくとも、憲法を変えたからといって日本がどこか他の国に打って出る可能性なんてほぼない。これはゼロといっていい。まずその動機がないのだから。
他にも、復興とか、金融、財政政策とか、選挙争点はいっぱいあったけど、とりあえず今思い当たったあたりは大体こんなものか。
ざっと見た感じ、自民党の公約というか政策は、基本正直ベースだったなという印象。これを実行するんだといわれても、国民としてはあんまりやって欲しくはないが、そうするしかないんだなーという感じ。一方で、民主党は大嘘ベースで政策を出してたなと改めて。本当にそんなことできるの?てことがやっぱりできなかった…どころか、真反対のことやらかしてるとか、幹部は投獄されても良いレベル。そりゃ、また大嘘でしょうよと思われてもしょうがないし、今回の惨敗も推して知るべしってところだったんじゃないかと。あからさまな嘘つきよりは正直な方が選ばれたのかなと。
自民の政策が嫌でも、公明は自民の腰巾着だし(ていうか創価だし)民主は大嘘つきで今は前いってたことと違うし、維新は自民と同じだし、みんなは何いってるかよくわからんし、他にも党あったっけ?という感じ。正直入れるところがないってのが今回の選挙だったんじゃないか。きっとそれも低い投票率に繋がったんだろうとは思う。