[時事/ニュース] 原発ゼロ時代

ついに国内で稼働している原発がゼロになった。

北海道電、節電要請は月内にも判断 泊原発「冷温停止状態」に
(nikkei.com)

何だ、全部止まっても平気じゃん、なんて思うのは早計で、これから夏に向けて電力消費が増えていくので、本当に平気かどうか分かるのはこれからである。実際、これまで国内の電力3分の1近くが原子力で賄われてたわけで、それが全くなくなったということは、単純に考えると日本の3分の1が電気なしになるってこと。

でもそうなってないのは、今のところそれ以外の電源で代替されているということだ。では何で代替されるのかというと、いわゆる再生可能なエネルギー、太陽光発電とか風力発電とか、そういうものであれば良かったのだろうけど、目下それらの技術は採算ベースにのっておらず、当面は主に火力発電になるだろうと思われる。

しかし、火力のエネルギー源である原油の価格が上がると、それはそのまま電気代に反映されるわけで経済を直撃する。あと、従来予備電源として控えにあった火力発電所が、今は原発の肩代わりをするためにメインで稼働することになるわけで、現状予備の電源がほとんどない状態と思われる。となれば、ピーク時にその発電機がトラブルで1基でも止まると、電力供給は危機的な事態に陥るのではないか。

石油や天然ガスといった火力発電の燃料を海外からの輸入に依存している日本にとって、比較的割安で少量の燃料で大きな電力を得られる原発は理想的な発電所ということができる。ただ、当然その燃料となるウラン235やプルトニウムは放射性物質なので取り扱いが難しいし、原子炉もメルトダウンを起こそうものなら周囲の地域を居住不可能にする程度には危険なものだし、使用済み燃料もやはり放射性物質であり廃棄方法も確立されておらず、いったんどこか適当な場所に保管しておくしかないのが現状である。そうした問題は数多あれど、それを考慮しても、当面は安価に得られる大きな電力というのは、経済的な観点でも安全保障的な観点でも非常に魅力的なのだ。

しかし、実際に原発事故が起こってしまい、その悪影響が顕在化してしまうと、世論はそれについて黙っていないし、マスコミもなぜかその問題点ばかりにフォーカスして報道する。それが続いた結果が、遂に原発ゼロということだ。

実際、原発なしで今後やっていけるだろうか。多分、たゆまぬ節電努力、計画停電などを駆使すれば、原発なしで辛くもやっていけるだろうとは思う。この際、節電技術、いわゆるエコ技術の研究開発が進めば、徐々に生活水準を戻していくこともできるだろう。太陽光や風力、波力、地熱などの再生可能エネルギーの技術も実用レベルに引き上げていくことで、電力供給量も戻っていくし、CO2の削減にもなる。ただ、そうした技術がいくら急速に進んだからといって、この1、2年ほどで全体の電力消費の3分の1が節電できるかというと、そう簡単ではないはずだ。

あと、特に太陽光や風力は、その出力が天候に左右されるためにリアルタイムな電力供給は不安定だ。これを安定化するには発電設備のほかに相応の規模の蓄電施設も必要になる。太陽光パネルや風車の建設やメンテナンスもまだまだコストが高い。地熱も場所を選ぶし、火山性の熱を利用する場所だと施設の老朽化も激しく、やはりメンテコストが割高になる。波力も安定しないのは同様で、その建設が海上となると、これもコストが問題になってくる。

これらが現状の火力や原子力と同等レベルになるまでは、当面それらの高コストを我慢することになるわけで、かつ、それらの電源が実用レベルに成熟してくるまで、その初期段階は少ない電力で綱渡りしていくことになる。その綱から落ちたり、綱が切れたりした日にゃ大混乱。いずれにしろ、原発ゼロという事実は、確実に経済を直撃すると思う。

仮に、ここで国が原発ゼロ宣言をして、これらの再生可能エネルギーを国策として推進するという法律を施行して、そのために“エネルギー税”みたいな追加の税金を創設するといったら、その政権を支持できるだろうか。そうでなくても、現実に原発が全部止まったわけだから、今まさにわりと危機的な状態にある。

リスクをとってリッチに暮らすか。安全をとって質素に暮らすか。

この事態をポジティブに考えるとするなら、持続可能エネルギーの技術や蓄電技術の発達の後押しにはなるだろうなということか。実際、尻に火がつかないと行動を起こさないのが人間というもので、今がまさにその状態といえるのかなとも。

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