正義の国

中国のチベット自治区とネパールの国境で、
亡命しようとする僧侶たちを国境警備隊が銃撃するという映像が公開され、
それが世界に出回って波紋をよんでいるようです。
中国の人権蹂躙映像、世界へ チベット亡命少年僧ら銃殺
Yahoo!トピックス より)
日本から見た中国という国は、
過去に日本に侵略されて、そのことを今も非難し続けている国、
という印象が強いと思います。
中国が日本に対して被害者であった歴史を忘れたくないのは、
そういうことを二度と起こしてはならないという、
表向きで正義の理由、つまり建前とは別に、
自国はかつて被害者だったという正当化に使えるという、
ひとつの大きな外交カードになるからという理由があるでしょう。
つまり、自国は悪ではない、という、
国際社会に対するプロパガンダになるということ。
例えば、今回のような残虐なことが明るみになったとき、
そのことばかりが集中して報じられると、
国際的な立場がどんどん悪くなってしまう。
そこで、それを何らかの理由をつけて正当化する一方で、
そればかりでは言い訳にしかなず、
国際社会は完全に理解しないだろうことを彼ら自身もわかっていて、
問題のすり替えを図る意味で、
そういうカードを切ってくる、ということになる。
それによって、当該の事件より大きな問題が過去にあった、
ということを大衆に思い出させて、
リアルタイムの問題を忘れさせる効果がある。
その意味で、日本の首相が靖国神社を参拝することを、
しつこく中国が政府として非難しつづけるというのは、
そういうカードを無くさない為の戦略のひとつなんでしょうね。
中国政府にとっても、
本音は、靖国なんかもうどうでも良い話ではないか。
その証拠に、あれだけ小泉首相との対話を拒んでいた胡錦濤氏が、
安倍首相に代わったら、とりあえず対話してみせた。
それは、小泉氏が靖国に大っぴらに参拝していて、
そんな首相と中国のトップが対話なんかしてしまったら、
例の外交カードの力が薄くなってしまうからだろう、と思うわけで。
安倍氏なら、まだ首相として参拝はしていない、
ならば、国として話し合う態度をまず見せておくことは、
社会的に認められるだろうという打算があるのだろうと。
ま、今回中国がどう出てくるかはわかりませんが。
そういう事件があったので中国のことばかり書いたけど、
これは、どの国にもいえることでしょう。
自由と解放の国をうたっているアメリカ合衆国にしたって、
人を人以下の奴隷として扱う制度が一番長く続いた国。
人種差別も政策によってかなり長い間保護されていた。
だから、長年南アフリカの政策も非難してこなかったと。
また、その合衆国は、
イランをテロリストを支援している国として非難し続けているけど、
実は裏でそのイランに武器を売っているという現実がある。
核拡散を防止しなければならないといっているけど、
合衆国は、一般市民に対して核を使用した唯一の国です。
当然のように、CTBT(包括的核実験禁止条約)にも批准していない。
その合衆国は、国際社会の警察を名乗って、
自分たちは銃刀を所持して世界平和を守っているのだ、
などと主張し続けていると。
本当に正義の国などというのは存在しなくて、
どの国も少なからず負の側面があるのだけど、
それを覆い隠しながら正義を装い続けている、というのが現実。
かといって、大国が自分が悪者であることを認めて開き直って、
世界征服に打って出てこられても厄介なんですがね。
その意味で、独裁者国家が、どっかの半島の小さな国だったりしたのは、
不幸中の幸いだったとでもいうべきか。
一応の正義というのはないと、世界はどんどん奈落に落ちていく。
なので、とりあえず公には一般的に“良い”ことを主張していく。
ただ、それは、本音とは別の建前である、というのは、
現実として、政治的に当たり前になっていると。
世界は、すごく微妙なバランスの上に成り立っているのですな。

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