エピソード記憶

ついこの間9月になったと思ってたのに、
もうその9月も終わろうとしています。
気温もすっかり下がっちゃいましたね。
秋です。
ところで、毎年この季節に殊さら感じることがあります。
近所の通りや街外れの路地なんかを歩いていて、
家庭から漏れ出してくる夕飯の支度の香りとか、
金木犀や銀木犀の花の香りとか、そういうものに気づいて、
懐かしいような、寂しいような、
何かそういう強い感じを覚えるのです。
本当に何気ないきっかけで、そういう感覚になるのですね。
信号待ちをしている車から香ってくる車内芳香剤の匂いとか、
昔実家の方で乗っていた車の匂いだ…みたいな。
そこから、そのときの漠然とした記憶が蘇ってきて、
ああ…みたいな、言葉で言い表せない感覚になる…。
匂いに限らないですね。
木の葉がちらちらと枯れ落ちる情景であったり、
学校が終わって集団で走って帰るランドセルの小学生だったり、
陽気の中どこからともなく聞こえてくるハトの鳴き声だったり、
ジェット機が飛行機雲をつくっている様子だったり、
昔よく聴いた曲が街中で不意に聴こえてきたり……
そういうものに気づいて、
昔経験した、その状況と同じ場面を想起するのです。
こういうのを「エピソード記憶」といいますね。
断片的なそういう情景から、
以前の同じ状況の記憶がわーっと蘇ってきて、
ものによっては微笑ましくなったり物悲しくなったりする。
何故か、秋というのは、
そういうのを強く感じる季節という気がするんですね。
本当は、いつもそういう情景は存在しているんだけど、
この季節には、そういうものに敏感になれるのかも…。
過ごしやすくなって、気持ちに余裕ができてくると、
辺りの空気も感じられるようになるってことですかね。
ただ、そういう記憶の多くが、今はもう失われているものというか、
二度とそういう経験をすることができなくなってる、
或いはそれを再現するのが困難になっている場合が多いので、
物悲しい感じになることが多いのかなぁ…と。

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