夢と現実を区別することはできない
とは、昔からいろんな哲学者がいってきたことだけど
こういう理由はどちらも私たち人間の認識であるから。
つまり、どちらも脳という器官が見ている世界だから。
では、なぜ人は、現実を現実らしいと認識し、
夢は夢らしいと認識することができるのか。
実はこちらの方が不思議な話だったりする。
現在の常識からすると、
夢も現実も同じく脳が経験するものであるはず。
この違いは、仮に夢が脳内のみで起こっている経験で
現実は外部からの刺激による経験であるとするなら、
夢の中にはその脳にとって新しいものがないということ。
つまり、夢の中では全く新しい経験をすることがない。
それは、現実とされる世界で脳が体験したことを
脳内で再構成し、様々な組み合わせで再生していると。
喩えるなら、現実は新しい光景を録画するビデオカメラで、
夢はそれを再生するプレイヤーということ。
ただ、かなりデタラメに編集して再生するプレイヤーだが。
しかし、これでそもそもの疑問が解決するわけではない。
結局、脳が経験したり想像したりするものであるという点は
夢も現実も何ら差がないから。
このカメラとプレイヤーを区別しようと試みているのも、
結局のところそういう思考の主体である脳なのだ。
ときどき、脳は、実際にはなかった出来事を
過去に経験したかのように記憶していることがあるという。
つまり、無意識に記憶が捏造されている。
これはそんなに特殊なことではなく、
些細な記憶の改変は、実は日常的に起こっているだろう。
好印象だったものを好きになろうとする記憶の美化や、
自律神経失調症に陥るくらいに誇張されるトラウマなど、
正にも負にも記憶はつくり変えられる。
いや、記憶自体はそのままなのかもしれないが、
それをどう感じるかという点が様々に変化しているのか。
いわゆるデジャヴ(既視感)という現象があるが、
これは、初めて見る光景であるはずなのに
過去にどこかで見たことがあるようなあの感覚。
まず、それが記憶由来なのか感覚由来(錯覚)なのか
それが判然としない。
見たことがある、と感じるということは
脳が過去に何らかの形で経験し記憶している索引のどれかに
今まさに経験していることがヒットしているということになる。
その経験というのは、夢の中のものであったかもしれない。
夢の中の経験は、
それ以前に現実で経験したものを再構成した経験なので
現実における他人(客観)にとっては架空のものだが、
当該の脳自身にとっては過去の経験に違いはない。
その光景に近いものを見ると
ゆわゆるデジャヴになるではないかと考えることもできるが、
それでも何か違う感覚という気もする……
いえ、この間ですね、近所の道を車で走ってるとき
いつも通ってるはずの交差点に差し掛かったところで
「あれ?これ前にもあったぞ」となったんですよ。
いや、そんなの確実に前にもあったというか、
いつも走ってる道なのでそんなの当たり前の話なんですが、
そうじゃなく、その見た光景全体が、というか。
信号の位置とか、前を走ってる車や交差点での対向車とか、
向かいに見えているショッピングセンターの看板とか
そのときハンドルを握ってる自分の存在とか…
もうそれらの感覚全部が一瞬だけ何かに一致して
「んっ?」と思った瞬間、すぐに普段の感覚に戻ったというか。
それが夢で見たような、もっとずっと昔に経験したような。
でも、その光景がずっと昔であるはずはないわけで。
(例えば、そこで見た看板はつい昨年できた店舗のもの)
まぁ、これがデジャヴというものなんでしょうけど
そういう用語があるということは私だけのことじゃないわけで
こういう感覚になる人は他にもいるってことなんすよね。
多分ね、これは、脳中心じゃないんすよ。
思考とか認識とか感覚とか記憶とか
そういうものを司ってる中枢は脳だと思われているけど、
実は違うのだ。
もっとこう、モヤッとしたクラウドみたいなものなんじゃないか。
何と古典的な!と思うだろう?
精神とか霊魂とかって昔からモヤッとした対象なんだけど
ここはひとつ原点回帰ってことで。(何がここはひとつだ)
他人の経験が自分の中にさり気なく入ってるとか。
逆に、自分の経験が他人の中に潜り込んでるとか。
てか、もう自分とか他人とか、そんなスタンドアロンではなく
記憶装置はどっか別のサーバにあるんじゃないか。
そもそも、自分の記憶がずっと連続して持続している
という時間的な感覚も実は思い込みかもしれないし、
昨日は今の自分ではなく他の誰かだったのかもしれない。
そして、それを反証なしに否定する根拠も実はない。
これって映画マトリックスか。
カテゴリ的に脳科学か分子生物学なのかわからないけど、
そのへんも天動説と決別せにゃならん日がくる気はしますね。
もしかすると、惑星運動の謎に地動説が解を与えたことと
デジャヴの謎は通じてるかもしれないよ?