回想

その日も祖母に連れられて、家から程ないところにある畑へやってきていた。
祖母は、畑に成っている茄子やキュウリを獲り、もう何度も使っているであろうしわくちゃの買い物袋にそれらをつめている。
私はその傍らで、畑のわきを流れる川(おそらく用水路)のほとりにある草を摘んでは投げて、というような意味のないことをやっていた。
陽気である。
田舎の昼下がり、車もほとんど通らないそのあたりは、祖母が茄子やキュウリを詰めるビニール袋の音と、水の流れる音しかない。
ときおり、空をプロペラ機が、ぶーん、と低い音をたてながら飛んでいく。
ふと遠くに目をやると、青空の彼方に銀色に光る何かが飛んでいる(…ように見える)。
UFO。
UFO!?
……いや、子供というのは、見たものを頭の中にある何かと一致させて、そのまま解釈してしまうのですね。
これは、私が保育園へ上がる前くらいの記憶。あの頃は何も悩みがなく、責任もなく、とにかく平和だったなと。まだまだ未熟で未経験で無学で。世の中がどう動いているかも全く知らず、出会いも別れもなく、自分と家族以外の存在は全て未知。悩みも不安もなく、あるのは希望と可能性だけ。
できることなら、この経験と知識をもったままあの頃に戻りたい。一度は誰もが思うことだと思いますけどね。今の自分に100%満足している人はそういないだろうけど、それでも、偽りのない自分の正義が信じられる人は、それだけで幸せなんじゃないかと思う。

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