AIについて思うこと

私は何となくIT業界という場に身を置いているわけですが、一口でIT業界といっても、システム開発現場の土方的なIT業界と、大学など研究機関における基礎研究を扱うIT業界とでは、だいぶ風土が違っております。私がいるのはその前者なのですが、そんなIT土方から見て、後者のIT研究というのは、何だか頭良さそうな、銀縁眼鏡をかけて白衣を纏った若い博士みたいなのが出てきそうな業界という感じで、ちょっと羨望の対象であったりもします。お金もいっぱいありそうなイメージ。

で、昨今のIT関連の話題の中でも特に語り草になってるのは、人工知能、AI(artificial intelligence)というやつでしょう。そしてこれは今のところ、その開発も利用も学術研究や基礎研究、開発などアカデミックユース(学術的なやつ)がメインとなっていて、そのへんが我々IT土方に降りてくる機会といったら、せいぜいPepperくんを受付係に仕立てるソフト開発程度です。それをAIといって良いかはわかりませんが。

そんなAIについて、ある種門外漢ながら私が普段感じてることを、ちょっとここで書いておこうかなと。


まず言わせていただくと、どうも最近コンピュータ上で動くプログラムのことを何でもかんでもAIって呼んじゃってない?という違和感のようなものがあります。囲碁将棋を指すプログラムはAI、PepperやAIBOなどに搭載されてるのもAI、会話を学習、車の自動運転を制御するのもAI、あとは「Hey Siri」とか「OK Google」とか「アレクサ」(Amazon Echo)みたいな音声アシスタントとか、このあたりまではまあAIかな、という気もするけど、エアコンや冷蔵庫、テレビなどに搭載されてる制御プログラムをAIと呼んだり、かつて無能チャットと呼ばれていたようなWebの自動応答プログラムみたいなのまでAIというのは、ちょっと言い過ぎなんじゃないのと。

このへんは、AIという言葉の定義もまだグラグラしてる感もなくはないし、そのうち家電やWebチャットもAIと呼べるくらいの要件を満たしてくるかなとも思うので、とりあえず置いといて。

私のイメージでAIというと、予めプログラムされたことだけを出力するのではなく、入力をデータに積み上げて、それを次の出力に反映する、という、いわゆる機械学習の性質を持ったプログラム。私はその用途は2つあると思っていて、1つは人間の思考回路(に近いもの)を人工的に実現する、それによって人間の代わりができる機械をつくるという用途。もうひとつは、人間には到底できないことを実現するという用途。

従来から人間の作業を代替する機械というのはあります。産業用ロボットや受付ロボットのようなアレ。ただ、アレらは固定されたプログラムに従ってまさに機械的に動作しているだけで、プログラムで想定されたケース以外の状況に柔軟に対応することができない。そこを臨機応変に、つまり、想定外の状況を入力として取り込んで次の出力に反映して対応する、ということができるようになると、機械が人間の仕事を代替できる範囲が格段に拡がる。

例えば、囲碁将棋のAIは、過去の数々の対戦を初期データとして持っている上に、実際に対局を重ねることで、その経験もデータとして積み上げ、次の対局に反映していくという、これはまさに人工知能、或いは機械学習の典型例といえる。車の自動運転のAIも、実際に道路を走る多くの車の走行データを積み上げて、より効率的で安全な運転にアップデートしていく。

これがもっと進むと、データだけでなく、プログラム自体も自ら書き換えていく人工知能も期待される。これは今も擬似的に実現されていて、プログラムが自らの行動基準とするルールを入力によって書き換えていくというエンジン(ルールエンジン=BRMS)があって、それはビジネス分野でも利用され始めている。BRMS自体はAIではないけど、これを使ったITシステムというのは、今のIT土方現場でもちょいちょい使われてたりはします。

この分野は今後確実に伸びると思っていて、特にインフラを支える分野での需要が大きくなるだろうなと。インフラと一口にいっても広範囲なんですが、鉄道や飛行機、車などの運用に関する交通分野、電気・ガス・水道などのライフラインの他、傷病者に対する医療や社会的弱者に対する介護などの分野も、人に変わってAIで担うという未来がみえる。これらは、社会的に絶対必要だけど、人間がすすんで自分ではやりたくはない分野、なんですよね。

例えば、介護分野は常に人手不足なんだけど、それはそうで、仕事内容がきつい上に給料もそう高くない。というか低賃金なケースがほとんど。しかし、従来型の機械任せにもできないデリケートな作業が多い。要介護者の動きというのは予測不可能なことが多く、あらかじめ決められたプログラムで動く機械では対処しきれない。そのへんがAIの柔軟さでカバーされていけば、人間の負担も軽減されるし、人手も減らせるし、そうした機械を開発、生産する業界の活性化にもつながる。

将来、我が身を機械に世話してもらうなんてディストピアだなあ…という人もいるのでしょうけど、例えば、入浴とか、下の世話とか、一部の医療的な施術とか、そういうのに人手を煩わせるのも気が引ける、というか、相手が人間だと遠慮してしまうという感情もありませんか。それが、相手が機械ならそういう遠慮の必要がない分、心理的にも楽だということもあるのではないかと。

ということで、IT業界は、AI分野にもっとガンガン投資していったら良いのではないか。今は研究開発フェーズで投資額も高くつくかもしれないけど、真剣にやれば元が取れて多額のお釣りも期待できる分野でしょう。既に自動車メーカーでは自動運転にAIを取り入れてるし、家電メーカーもIoTと銘打ってクラウドのビッグデータと連携したAI制御を家電やホームシステムに組み込んでいこうとはしてるようです。

個人的には、上にも書いた通り、介護方面でのAI開発を頑張っていただき、我々世代が将来そうした施設でお世話になる老人になった頃に、介護のことならドンと来いレベルまで成長してくれてると良いなぁ…なんて思ったりしております。介護されるのが我が身になったとき、なるべく人に迷惑かけたくないなと。

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