昨今いろんな意味で熱い話題となっているSTAP細胞。これについて、今私が最近思っていることを記しておこうかなと。
まず、経緯。
小保方晴子さん「STAP細胞の作成法を近い将来公開」 3分でわかる経緯まとめ
(huffingtonpost.jp)
STAP細胞とは?
刺激惹起性多能性獲得細胞
(ja.wikipedia.org)
コトの起こりは、今年1月に科学誌『ネイチャー』に掲載された論文から。STAP細胞というのは、簡単にいうと、既に分化済みの細胞をある条件下で弱酸に漬けると、初期化して万能細胞に戻る!というもの。これは、約2年前に京大の山中さんが発表していたiPS細胞とほぼ同等か、それ以上の技術として期待されるものでしたと。iPSもSTAPも、万能細胞をつくるという技術では共通しているけど、その手順や生成にかかる期間においてSTAPの方が格段に容易であるというのが、STAP最大のアドバンテージ。
その論文の筆頭著者で研究チームのリーダーである小保方さんは日本人の若い女性研究者という話題性もあり、一躍時の人に。ところが、ネイチャーへの論文掲載から間もなく、その論文内容に不審な点が散見されるという報告が寄せられるようになったと。
まず、エビデンスであるはずの画像が切り貼りであることが発覚。論文自体も、他からのコピー(の疑いが強い文面)が複数みつかり、期待から一転、疑念の声が日増しに強まるという事態に。今回の問題。私が思いつく限りで、次の論点があると思う。
- 何故、あんな論文を出してしまったのか?
- 理研は事前にあの論文をどこまで認識していたか?
- STAP細胞は実在するのか?
1点目は、まぁ、STAP細胞の研究である程度成果が出たからこそ論文にまとめて発表した、というのは普通に考えられる経緯なのだけど、それにしては、成果とされる物証なり映像なりが断片的。事実、論文に使用されていた画像も、過去論文や他ソースからの切り貼りであったわけで、それは小保方さん本人も認めている。でも、普通に考えて、今回の研究結果エビデンスがあるなら、それをそのまま論文に添付するのが最も順当だし簡単なはず。なぜそれをせず、あえて他から転用する必要があったのか。
或いは、それができなかった?今回の研究ソースをそのまま公開できない理由が何かあるのか。
かつての数学者は、何か難問を解く素晴らしい手順を発見したとしても、それをなかなか他人に公表しようとしなかったという。その手順は、その数学者だけが知っている企業秘密というわけだ。今の学者連中、或いは研究機関、企業、さらには国家に至るまで、その技術が有益なものであればあるほど、その手の内を明かさない。もしかすると、小保方さんにもそのような圧力がかかっているのか?いや、それにしても画像の切貼りなんてすぐバレるようなことをやるのは機密保持が理由であっても、あまりにリスクが高いと思うのだけど。実際、今回の拙い論文が出てしまったせいで、小保方さんだけでなく、理研自体も学術研究機関としての姿勢が疑われるような事態に陥っている。
2点目。その理研が今回のSTAP論文をどこまで把握していたか。あの論文は、理研の中で事前に誰もレビューしていなかったのか?というのは、私の中でとても素朴な疑問だったりする。それが理研の風土なのか。他チームとの繋がりは薄く縦割りなのか。私はその分野には身を置いていない素人なので知らないのだけど、学術研究の業界というのは、広くそういうものなのだろうか。つまり、他の研究者に内容の妥当性を検証してもらうという手順はなく、ぶっつけ本番で科学誌に発表して、とりあえずドヤ顔という世界?
いやー、少なくとも身内には見せるものじゃないか?いくらなんでも。そう考えると、理研内部であの研究や論文内容を知っていた人は少なからずいたはずで、その人たちは今は必死に息を潜めている…ということになる気もしないでもない。だって、あの切り貼り論文がその人達の目を抜けてきたとなると、どんだけ節穴だったのかって追求が始まるのも必定でしょうし。素人が見ても異常を指摘できる内容だったもんね。今回のは。それとも、レビュアーもそこに不正があると知りつつ、それが何か大きな力に抑えられて発表にGOサインが出てしまった?
そもそも、今回の研究は、理研の小保方チームだけでなく、米ハーバード大のバカンティ教授も重要な役割を果たしている。氏は小保方さんの師匠でもあるって話だし。そして、バカンティは今に至るもSTAPは確実に存在する!と主張しているのだから、よほどの信念というか確信があるとみえる。理研の人たちは、おかしな点が見え隠れするのに気付きつつもバカンティという大御所を信じてしまったとかもあるのかもしれない。ただ、そうなると論文の筆頭著者はバカンティでも良い気がするけど、そこがなぜ理研の小保方さんになったのかという経緯も考えると、そこに理研とハーバード大のせめぎ合いもあったのではないか?という勘ぐりも出てきたり。
STAP細胞というのは、どうやらほぼ確実に存在するようだ。ただ、その作成手順はまだしっかり確立はしていないし、研究成果として出ている画像の類も見栄えがしないものが多い。しかし、はやく論文にまとめて発表しないと、先に発表された方の手柄になり、関連する利権も取れなくなる。このままではハーバード大のチームにそれを譲ることになるが、理研はそうはさせじと(半ば捏造された)中途半端な論文を見切り発射しちゃったよ?…的なシナリオも、可能性としてなくはない。
で、肝心なのは3点目。もう誰がどう思ったやら、組織や利権がどうとかいう以前に、そもそもSTAP細胞がなければ何も始まらないわけですな。純粋に科学という視点でSTAP細胞はあり得るのか。あったとして、それは医療に利用可能なレベルに実用的なのか。あるかないか、でいえば、ある可能性は高いと思う。というより、あって欲しいなぁ、という希望的観測みたいな。というのも、酸で細胞が初期化されるという事象そのものは、植物の細胞においては確認されているものらしい。それを知っていれば、同様のことが動物の細胞に応用できないか?とは、自然に考えるし、現実そうであっても意外なほどではない。
ここに、研究者としてガチで手をつけるかどうかは、コロンブスが卵を割って立てた話に通じるところだろうと思うのね。ただ、今の今に至るまで、小保方チーム以外の人は誰も1度もSTAP細胞作成に成功していない、というのもまた事実。それは、小保方さんがその作成手順の全てを明かしていないから、という理由もあるけど、にしても、理研としては疑義をかけられてから程なく、STAPを他の研究者にも作成して検証してもらえるように論文とは別にSTAP細胞の詳細な作成手順を公開していた。それでも成功例は1つも出なかったわけで、いよいよ存在そのものが怪しいとなるのは当然の流れなんだけど。
個人的には、やっぱり発表が早過ぎたんじゃないか、という感想。何かどうも事を急いてる感がある。それが理研なのか小保方さんなのか、主体はよくわからないけども。少なくとも、iPS細胞のときは、その作成手順に従えばそれをやった多くの研究者が一定の結果に至ることができたわけで、その意味で、発表された段階での完成度は高かった。一方で、今回のSTAP細胞は、手順に従ってもことごとく失敗。
そもそも元となる論文が正確性に欠いているという事実があり、そこの正当性がないのは否定できないわけで。ただ、もしSTAPがあるなら、生物学や再生医療などの方面に強烈なインパクトがあるのは確かでありましょう。