[考察] 自殺問題

以前からその問題が指摘されている自殺者の急増。これだけ現象が顕在化しているにもかかわらず、そのはっきりとした原因がわからず、それに対する有効な対策が何ら打つことができていない現代社会。これは一種の社会現象であり、必然だったという声も聞かれるが、それにしてもなぜ生命の最終ラインである自らの死を選択する者がこんなに増えることになったのか。

増え続ける自殺者

厚生労働省の調査によると、自殺者の数は年々増え続ける傾向にある(年次推移)。特に1998年以降、全国の自殺者数は3万人を超え、この数値はゆるやかに上昇しながら最近までずっと維持されている。この数は、年間の交通事故死者数の4~5倍にあたる数値(ちなみに、2006年の交通事故による死者数は6000人強)だと聞けば、驚く人も多いのではないだろうか。

なぜ自殺するのか

指摘されている主要な自殺原因としては、社会的な人間関係、生活や環境の問題、鬱や統合失調症などの精神疾患、重い病気に耐えかねて、などがある。この傾向は年齢層によっても分かれてくるが、結局のところ、これらの問題が年々大きくなっている、増えてきているから、自殺者も年々増えてきているということになる。そして、これらの原因にもさらにその原因があり、その根本となっている原因が何なのかがはっきりしない為に、自殺問題が慢性化しているといえる。

自殺は食い止められないのか

自殺を食い止めるといった場合、2つのアプローチがあると考える。ひとつは、原因の温床となっている社会、環境の方に修正を加える方法。そしてもうひとつは、自殺(候補)者の悩みや問題を見抜いて説得する方法。

後者の場合、その対象者があからさまに自殺しそうだ、という場合は対症療法としては有効だが、本気で自殺を考えている人は、ほとんどの場合それを周囲に感じさせず自らの中に押し込めてしまっている為、なかなか見抜きにくい。仮にその時点で食い止めたとしても、自殺しようと思った理由が解消しない限りは、また自殺を選択肢に入れてしまうことも十分にあり得る。

やはり自殺の原因とされる社会、環境の問題を解決すべきなのだが、現実問題として社会を大きく変えるということは困難である。おそらく多数派優勢で動いているこの社会で、そこに溶け込むことができない少数派というのは、どうしても常人(多数派の人)以上の苦労を強いられる。それも精神的に強ければあまり問題にならないだろうが、それを逆境としか捉えられない精神的弱者は現実逃避の道を選ぼうとしてしまう。

これから自殺をお考えの方へ

もう首を括るしかない、逃げ場がない、これ以上醜態さらすよりはいっそ…などと思われている方、もう一晩寝て、明日もう一度考えてみてはどうだろうか。

もう何度も考えた、これ以外に道はない、と思われているかもしれないが、道はいくらでもある。普段やらないことをやってみるのである。普段読んだことのない本を読んでみる。新聞を読んでみる。ちょっと普段行かないところへ出かけてみる。それだけで、大きく気持ちを変化させることができる。

人間の心は複雑なようで、感情については、実は非常に単純にできている。楽しいと感じるのは、その状況、その事が自分にとって楽しいからであり、悲しいと感じるのは、それが自分にとって悲しいからだ。

当たり前なのだけど、自殺者の多くは、あえて悲しいこと、苦しいことをやろうとする傾向がある。そんな必要はないということに気づくことが重要で、気づかないのは、その苦しみや悲しみ(をもたらしている環境や状況)によって視野が狭くなっているからだ。少しそれ以外のものを見るようにするだけで、心の状態というのは変わってくるものである。

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