言語の限界

どんな証明文の中にも、
それ以上証明できない事項が含まれる、
という、話があります。
その最たる例が
 「この文章は間違っている」
という文面の証明。
この文章がもし間違っているなら、
この文章そのものは正しいことになり、
この文章が表現している内容は真ではないことになる。
この文章がもし正しいなら、
この文章が表現している内容は間違っていることになり、
この文章そのものも間違っていることになる。
ややこしい…。
これは「エピメニデスのパラドックス」といって、
言語学や哲学の世界では有名な陳述です。
こういうのを「自己言及」というんですけど、
理屈ぬきに、もう「そうである」
としてしまうしかない状況があるんですよね。
例えば、数理でいうなら、
 1+1=2 である
というのは、もうそれ以上証明不可能です。
ならば、
 1+1=3 である
ということが偽であることを証明できるかどうか。
これは、そうなることが前提、ということで、
それをベースに、他の様々な理屈ができあがっていくのですね。
何がいいたいかというと。
要は、今の言語の仕組みで、或いは数理数学の仕組みで、
世の中の全てを無矛盾に説明することができるだろうか?
ということ。
科学というのは、
森羅万象に言葉によって説明をつけていく作業です。
でも、その言葉自体で記述できない、
あるいは、言葉を使ったロジックによって説明できない事柄が、
世の中にないとはいえないだろうな、ということ。
ゲーデルやヒルベルトあたりは、
既にこういうことに気づいていろいろ考えていたみたいですが、
結局、人間の理解する言語ロジックでは、
最終的な証明なり説明はできないのではないか、
というところで終わっているようで…。
いわゆる不完全性ですね。
人間の思考は、言語をベースにしているので、
その構文なり仕組み自体は正しいものでなければならない、
というか、正しいという前提で話をしているはずです。
でも、ちょっとした言葉遊びで、
その言語自体の矛盾を見出すことが出来ます。
クレタ人の話とか、床屋のパラドックスとか。
 その街の床屋は、
 自分で髭を剃らない人の髭を剃る。
じゃ、その床屋の髭を剃るのは誰だ?
文章自体は正しいのに、
それが表現している陳述は矛盾している、
つまり、間違っている、ということは、
こんな簡単な文章でも実現してしまうわけです。
つまり、前提が間違っている可能性がある。
しかし、それは証明不可能。
ここらへんに限界を感じている人って、
結構いるんじゃないかなぁ、と。

コメント

  1. もじお より:

    否定と反対、似ているけれど同じものではないですね。けれど、違うものとも言い切れないところが。
    この「同じものではない」は「否定」ですが、「違うもの」は「反対」です。
    わたしは言語というものは不完全ではなく、非完全なものではないかと思います。
    「「この文章は間違っている」という文面の証明」
    「証明」とは何を基準として正しいとするのでしょうか?
    例えば「構文として成立する」を基準とすれば、主語と述語があって日本語としては成立していますね。
    「意味が理解できるか」を基準とすれば、普通に日本語を理解するものならば意味は伝わるので理解できるでしょう。
    「論理として成立する」を基準とすれば、本文にあるように論理的に矛盾するので成立しませんね。
    結局きっと「「この文章は間違っている」という文面の証明」という文章が完全でないため、いろいろな意味(基準)をごちゃ混ぜにして考えようとするから訳が分からなくなるのでしょうね。
    わたしも言語には限界があると思いますが、これは完全性に対する限界であって、同時に「完全でないことを表現できる」ことの証明でもあります。
    こんなのはどうでしょうね

  2. 月影 より:

    なるほど。
    確かに、実際にはあり得ないことまで、
    文章では表現できますからね。
    でも、文章としては真であるわけで。
    これは、証明というのがポイントですね。
    文章によって証明するというのは、
    結局のところ帰納法のことで、
     前提となる~が正しい、ならば、
     同様のことがいえる~も正しい
    ということになると思うんですが、
    その出発点となる(証明不能な?)前提条件は、
    文章外の要員によって確定している。
     1+1=2
    なのは、1つのモノに1つのモノをもってきたら、
    その個数は2つになるのだ、
    という数の決まりで、
    つまりこれは「公理」なのですね。
    「この文章は間違っている」
    という陳述の証明は不可能である。
    といってしまったのが、
    多分「不完全性定理」なのかな…。

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