ネクタイを買いに

私の場合、朝はずっと寝ぼけている感じなのだけど、今日は輪をかけてボケていた。
会社へ着いてコートを脱いで席へ付く。ハッと気づくと、あれ、何かないな、と。襟も第一ボタンはずれてなんともだらしない状態。ネクタイしてねーじゃん。
でもまぁ、基本作業着の職場だし、大丈夫か。と、そこに同僚の会話が。
「今日お客さん来るんだよねー」
「うち関係あるんでしたっけ」
「うちのつくった部分も見るって」
あーそうだ。今日お客さん来るんだった。私は、そこへしゃしゃり出ていくこともないだろうと思うけど、しかし、希望率ではないが、そうなって欲しくないと思うことに限ってそうなることは多い。
とりあえず、職場から一番近い洋服屋を検索。近くて電車で1駅のところにあるコ○カ。駅から徒歩7、8分くらいらしい。
よし勝負!
さり気なく席を立ってトイレにでもいくフリをして、廊下へ出たら猛ダッシュ!駅まで徒歩10分少々をほぼ全力疾走で約5分で走破。駅につくと丁度良く電車が滑り込んできた。それに飛び乗り約1分。着くなり電車を飛び出し改札を抜け、まるで太陽にほえろの刑事みたいにノーネクタイの走る男。
目的のコ○カまで疾走約3分。目に入った1本3000円のネクタイをつかんでレジへ。
「ネクタイ2本目から1000円になりますが…」
うむむ、それはおいしい話だが、とりあえず今の私はトイレ中の身である。1本で…といって、そのまま店を飛び出し、再び駅まで太陽にほえろで約3分。またまた丁度よく電車が滑り込んできて、飛び乗り約1分。駅から会社まで、もうそこまでくるとさすがに運動不足な私はヨレヨレで、7、8分。会社に帰ってきて、汗を拭いて、はずんだ息が落ち着いたところで、ちょっと長めなトイレから帰還した風に着席。
もちろんそのときの私はネクタイ姿。
……ちょっと吐きそうだった。
やればできるね。私も。まさか、同僚達も、私がその数分間、となりの駅の洋服屋までいっていたとは思うまい。かなり運もあったけど(電車が丁度よくなければもっとかかった)。
まあ、私がお客さんの前へ出ることは結局ありませんでしたが。
そもそも、ちゃんとネクタイくらい確認して出かけようというお話。

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